先月の静岡経営塾の課題で「慕われる人の習慣」という本を読みました。
とても役に立つ本でしたので、読んでいない方はおススメです。
その本を読んでいると、その内容とうちの社員だったYさんの姿が重なる場面が何度もありました。
Yさんは、今年の3月いっぱいで独立を理由に退社しましたが、それまでの約1年半、本当に私たちの良いお手本となって働いてくれていました。
最初にうちに面接に来た時にすでに55歳という年齢でしたが、「自分の子供たちも手を離れたので、好きな仕事をしたい」ということで塗装の仕事を学ぶために、うちで働かせて欲しいとのことでした。
Yさんの叔父さんに当たる方が塗装屋をしていて、もう高齢で近い将来、叔父さんの仕事を引き継いで欲しいとも言われていたそうです。
ですから、必死で仕事を覚えようと、うちの若いメンバーの中でも一番動いてくれたり、私にいろいろ質問をしてメモを取ったり、働いてお金をもらうにはこのようにしなければならないということを、身をもって私たちに見せてくれていました。
Yさんは、サッカーのコーチのライセンスも持っていたので、昔から地域の少年団のコーチをやっていたり、シャギリの保存会の頭もやっていたので、それらを通してたくさんの子供たちと関わり、育てていました。
そんなこともあり、Yさんには、仕事面でもそうですが、若い子たちを育てることにも協力をお願いしていました。
Yさんも「周りを巻き込むのは得意ですから任せてください」と言って協力してくれました。
というより、Yさん自身が人好きで、関わる人のことを思い、真剣に関わってくれる人でした。
働き始めてすぐに、うちのメンバーの様子も把握したようで、「俺もいろいろな会社を見てきたけど、建築関係でこんな会社は無い。できるメンバーじゃないけど、こういうメンバーのほうがうまくやれば、強いチームになりますよ」と言って一人ひとりと関わってくれました。
ある時は「この子のこういうところが気になって、夜にネットで調べてみたら、もしかすると発達障害があるかもしれないですよ。そしたらこれをできるようにするのは難しいと思うから、こういうアプローチをしましょう」と言ってくれたり、見ていてあまり向上心を感じない子には、「俺もまだ始めたばかりで出来ないことだらけだけど、これを上手くできたら俺たちカッコ良くない?頑張ろうぜ!」と、自分の子供よりも若い子たちと同じ立場になって盛り上げてくれたりしました。
また前職は長距離のトラックの運転手をしていて、仕事中に待ち時間が結構あるらしく、アニメや漫画もよく観ていたそうで、若い子たちとの会話にも合わせて楽しませていました。
現場作業はキッチリ、ガンガン厳しくやるので、Yさんと一緒にいく若手は、それについていくのに必死で大変そうでしたが、イキイキしていました。
現場から帰って日報を書いている時などには「今日のお前の動きは良かった。今度はここを上手くやれるようにしよう」と言ってくれたりもしていました。
仕事面で注意をしなければならないことがある時も、「ここは同じ立場の自分から言ったほうが良いと思うから俺から注意しておきます」「ここは社長の海野さんから言ってください」と相手のことや効果も考えてくれていました。
Yさんとは、いろいろ相談をしたり二人でよく話しをしましたが、「こいつらを何とかモノにしてやらなきゃなぁ」と言っている姿から私自身も、もっとしっかりしていかなければならないという思いにもなりました。
また、北陸や東北で大雪警報などが出ると、前職の同僚が雪で立ち往生などしていないかを心配して連絡を取ったりと、仕事云々ではなく、仲間のことを思ってくれる人でした。
そのようなYさんですから、私も含め、皆がYさんのことを好きでしたし、慕っていました。
この一年半、日々Yさんとの関りの中で、本当にいろいろなことを学ばせてもらいました。
慕われる人のお手本を身近で見せてもらえたことは、私自身にとっても社員の皆にとっても貴重な経験になりました。
慕われる人の習慣の本の中でも、慕われる人が受ける恩恵が書かれていましたが、Yさんは独立をしてまだ2か月ほどですが、「Yさんが自分で仕事を始めたなら是非やってもらいたい」と言われて、一人ではやり切れないほどの仕事が、あちらこちらから来ているそうです。
今、仕事が無くて困っている職人も多くいる中で、始めて一年半のYさんのところに多くの仕事がくるという事実から、ただ仕事をしていくだけでなく、人から慕われる生き方をしていくことの大切さを身をもって教えてくれていると思います。
今回、本を読んだだけでしたら、頭に知識を入れるだけで終わっていたと思いますが、Yさんのおかげで場面場面をイメージできたことが良かったです。
今後に活かしていきたいと思います。